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慢性痛はなぜ長引く?「痛みへの恐怖」と恐怖回避モデルをわかりやすく解説

慢性痛における痛みへの恐怖と回避行動を示す恐怖回避モデル

こんにちは!

UNITYボディコンディショニングの山崎です!

名古屋市東区芳野・森下駅近くで、

不調や痛みの改善を目指した

ボディコンディショニングサロンを運営しています。

目次

はじめに

「痛みがあるから、なるべく動かさないようにしている」

「また痛くなったら怖い」

「この動きをしたら、もっと悪くなるかもしれない」

腰痛や肩・膝などの痛みが続いている方から、このようなお話を聞くことがあります。

痛みが出たときに身体を守ろうとするのは、自然な反応です。

実際、ケガをした直後などは、患部への負担を減らしたり、必要に応じて身体を休ませたりすることが大切な場合もあります。

しかし、身体の状態が落ち着いてきたあとも、

「痛みが出る=身体を傷めている」

「この動きは危険だから避けた方がいい」

という不安が強く残ることで、必要以上に身体を動かさなくなることがあります。

痛みそのものだけでなく、「痛みに対してどう感じ、どう行動しているか」も、慢性的な痛みを考えるうえでは重要です。

今回は、慢性痛研究で知られている「恐怖回避モデル(Fear-Avoidance Model)」をもとに、痛みと恐怖、行動の関係について分かりやすく解説します。

恐怖回避モデルとは?

2000年、VlaeyenとLintonは、慢性的な筋骨格系の痛みに関する研究を整理し、痛みに対する恐怖と回避行動の関係をまとめました。

このモデルで重要なのは、

「痛みを経験したこと」だけではなく、その痛みをどう受け止め、その後どう行動するのか

という部分です。

例えば、腰を曲げた瞬間に痛みが出たとします。

その後、

「少し痛かったけれど、徐々に戻していけば大丈夫そう」

と考える場合もあれば、

「また曲げたら腰を傷めるかもしれない」

「もっと悪くなるかもしれない」

と考える場合もあります。

同じような痛みを経験しても、その後の受け止め方や行動は人によって異なります。

痛みから「動くのが怖い」に変わっていく

恐怖回避モデルでは、一つの経過として次のような流れが考えられています。

恐怖回避モデルにおける慢性痛の悪循環と、回復につながる行動の流れを示した図

痛みを経験する
↓
痛みを「危険なもの」として捉える
↓
痛みに対する恐怖が強くなる
↓
痛みが出そうな動作を避ける
↓
活動できる範囲が狭くなる
↓
さらに身体を動かすことが怖くなる

例えば腰痛であれば、

「前屈すると、また腰を痛めそう」

という不安から前屈を避ける。

重いものを持たなくなる。

運動をやめる。

趣味だったゴルフにも行かなくなる。

最初は「腰を守るため」に行っていたことが、長期間続くことで、日常生活や趣味まで制限してしまう場合があります。

「痛みの破局的思考」とは?

恐怖回避モデルを理解するときに重要な考え方の一つが、

Pain Catastrophizing(痛みの破局的認知・破局的思考)

です。

これは、単に「ネガティブな人」という意味ではありません。

例えば、

「この痛みはかなり悪い状態なのでは?」

「もう元には戻らないかもしれない」

「動いたらさらに身体が壊れるのでは?」

など、痛みを非常に大きな脅威として捉えている状態を指します。

慢性的な筋骨格系の痛みでは、このような痛みの捉え方と身体機能障害との関連が報告されています。

ただし、

「考え方が悪いから痛い」という意味ではありません。

ここは非常に重要です。

過去に強い痛みを経験したこと。

一度良くなったあとに再発したこと。

検査結果をどのように説明されたか。

家族や周囲の人からどのような話を聞いたか。

さまざまな経験によって、

「この動きは危険かもしれない」

という考えが形成される可能性があります。

そのため、「考えすぎですよ」と否定するのではなく、その方が何を不安に感じているのかを理解することが大切です。

「痛い」と「身体が壊れている」は必ずしも同じではない

痛みについて理解するときに、とても重要なポイントがあります。

痛みの強さと、身体組織の損傷の程度は、必ずしも常に一致するわけではありません。

国際疼痛学会(IASP)では、痛みは単に身体組織から送られてくる信号ではなく、生物学的・心理的・社会的要因などの影響を受ける個人的な経験であるとされています。

これは、

「痛みは気持ちの問題」

という意味ではありません。

痛みは実際に本人が感じているものです。

一方で、

「痛みを感じた=その瞬間に身体が傷ついている」

「少し痛みが出た=動作を中止しなければいけない」

とも限りません。

だからこそ、身体の状態を確認したうえで、

「今はどこまで安全に動くことができるのか」

を評価することが大切になります。

動かさないことが悪いわけではありません

ここも誤解しやすいところです。

痛みが出た直後に痛む動きを避けることは、決して悪いことではありません。

ケガの種類や状態によっては、身体を保護することが必要です。

問題になる可能性があるのは、

身体が回復してきたあとも、「怖いから」という理由だけで動作を長期間避け続けている場合です。

例えば、

「前屈すると、また腰を痛める」

と思っている方が、前屈を一切しなくなったとします。

そうすると、

「実際に前屈してみたけれど、思っていたような悪化は起こらなかった」

という経験をする機会もなくなります。

つまり、

「前屈=危険」

という考えが変わらないまま残る可能性があります。

「避けたから大丈夫だった」という学習

もう一つ重要なのが、回避行動による学習です。

例えば、

「前屈したら腰を痛める」

と思って前屈を避けた結果、腰痛が出なかったとします。

すると、

「前屈しなかったから悪化しなかった」

と感じる場合があります。

その結果、次回からさらに前屈を避けるようになる。

回避することで一時的には安心できますが、その動作が本当に危険なのかを確かめる機会も失われてしまいます。

これは、恐怖回避モデルを理解するうえで非常に重要なポイントです。

では、怖くても我慢して動けばいいのでしょうか?

答えは違います。

恐怖回避モデルは、

「痛くても我慢して動きましょう」

という考え方ではありません。

まず必要なのは、身体の状態を確認することです。

外傷や強い炎症、神経症状などが疑われる場合や、医療機関での検査が必要な状態では、それに応じた対応が優先されます。

そのうえで、

「どんな動きを怖いと感じているのか」

「その動きをすると何が起こると思っているのか」

「実際にはどのくらい動けるのか」

「本当は何ができるようになりたいのか」

という部分まで確認していきます。

「思っていたより大丈夫だった」という経験

例えば、前屈を怖がっている方がいたとします。

その方が、

「前に曲げると、かなり強い痛みが出ると思います」

と考えていたとします。

身体の状態を確認し、安全と判断できれば、いきなり大きく動かすのではなく、できる範囲から少しずつ前屈してみます。

その結果、

「思っていたほど痛くなかった」

「少し違和感はあったけれど、普通に戻せた」

「動いたあとも悪化しなかった」

という経験が得られることがあります。

大切なのは、「痛みが一切出なかったこと」だけを成功と考えないことです。

少し痛みを感じても、

予定していた動作ができた。

動いたあとに悪化しなかった。

以前より動ける範囲が増えた。

こうした経験も大切です。

少しずつ、

「この動きは思っていたほど危険ではないかもしれない」

という経験を重ねていきます。

痛みだけでなく「何ができなくなったのか」を見る

慢性的な痛みを評価するとき、

関節の動き。

筋力。

姿勢。

身体の使い方。

神経学的な状態。

こうした身体評価はもちろん重要です。

しかし、それだけではなく、

「痛みが出てから、何をしなくなったのか?」

を確認することも大切です。

例えば、

ゴルフに行かなくなった。

旅行をやめた。

ジムに行かなくなった。

子どもと遊ばなくなった。

仕事で重いものを持たなくなった。

人によって困っていることは違います。

さらに、

「痛みが良くなったら、本当は何をしたいですか?」

という部分まで考えていきます。

痛みを減らすことだけがゴールではありません

もちろん、痛みを軽減することは大切です。

しかし、

「痛みが0になったらゴルフを始める」

「完全に痛くなくなったら運動する」

と考えていると、活動に戻るタイミングを失ってしまうことがあります。

身体の状態を確認しながら、

できる運動から始める。

少しずつ負荷を増やす。

実際の動作に近づける。

そして最終的に、

その人が「やりたいこと」に戻っていく。

痛みの数字だけではなく、そこまで考えて身体をみることが大切だと考えています。

慢性痛は一つの原因だけで説明できない

恐怖回避モデルは、慢性的な痛みを理解するうえで役立つ考え方です。

ただし、

「恐怖があるから慢性痛になった」

と単純に説明することはできません。

慢性的な痛みには、

身体組織の状態。

神経系。

身体活動。

睡眠。

ストレス。

過去の痛みの経験。

仕事や生活環境。

痛みに対する考え方。

など、さまざまな要因が関係します。

研究でも、痛みに関連する恐怖と痛み・身体機能障害との関連は報告されていますが、「恐怖が慢性痛を引き起こす」と単純な因果関係として断定できるほどのエビデンスがあるわけではありません。

恐怖や回避行動は、慢性痛を理解するための「一つの要素」として考えることが大切です。

まとめ

痛みが長期間続いている場合、痛みが出ている場所だけを見ても説明できないことがあります。

「また痛くなるかもしれない」

「もっと悪くなるかもしれない」

という不安から身体を動かさなくなり、その結果、できることが少なくなっている場合もあります。

だからこそ、

  • 身体の状態を確認する
  • どんな動作を怖がっているのかを知る
  • 痛みによって何をしなくなったのかを確認する
  • そして、本当は何ができるようになりたいのかを考える

このように、身体だけではなく、その人の行動や生活まで含めて考えることが大切です。

そして、

痛みを無視して動くのでもなく、痛みが完全になくなるまで何もしないのでもない。

現在の身体の状態を確認しながら、安全にできることを少しずつ増やしていく。

その先に、

「またゴルフがしたい」

「旅行に行きたい」

「運動を再開したい」

といった、それぞれの「やりたいこと」があります。

痛みを改善することだけでなく、その先の生活まで見ていくこと。

それが、慢性的な痛みと向き合ううえで大切な視点の一つだと考えています。

【参考文献】

Vlaeyen JWS, Linton SJ.
Fear-avoidance and its consequences in chronic musculoskeletal pain: a state of the art.
Pain. 2000;85(3):317-332.

Vlaeyen JWS, Linton SJ.
Fear-avoidance model of chronic musculoskeletal pain: 12 years on.
Pain. 2012;153(6):1144-1147.

Martinez-Calderon J, et al.
Pain-Related Fear, Pain Intensity and Function in Individuals With Chronic Musculoskeletal Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis.
J Pain. 2019;20(12):1394-1415.

Raja SN, et al.
The revised International Association for the Study of Pain definition of pain: concepts, challenges, and compromises.
Pain. 2020;161(9):1976-1982.

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