腰痛と血流・循環の関係|筋肉・神経・身体の「循環」から腰痛を考える

こんにちは!
UNITYボディコンディショニングの山崎です!
名古屋市東区芳野・森下駅近くで、
不調や痛みの改善を目指した
ボディコンディショニングサロンを運営しています。
はじめに
腰痛というと、
「腰の筋肉が硬い」
「骨盤や姿勢が悪い」
「腰の関節が硬い」
といった、筋肉や骨・関節の問題をイメージする方が多いと思います。
もちろん、これらは腰痛を考えるうえで重要です。
しかし、私たちの身体を構成している筋肉や神経などの組織が正常に働くためには、酸素や栄養が届けられ、不要になった物質が回収されることも必要です。
そこで関係してくるのが「循環」です。
血液によって酸素や栄養が組織へ運ばれ、毛細血管と組織の間で物質交換が行われます。そして組織の周囲にある水分(間質液)は、静脈やリンパ系などを通して回収されていきます。
つまり身体は、
「動くための構造」だけではなく、「組織が働くための環境」も必要
なのです。
実際に近年では、慢性腰痛のある方では腰部筋の酸素化や血液量に違いがみられることや、腰部脊柱管狭窄症では神経の圧迫だけではなく、神経周囲の微小循環が症状に関係する可能性などが研究されています。
今回は、
なぜ循環が身体に必要なのか。
そして、
腰痛と循環にはどのような関係があるのか。
医学論文をもとに、できるだけ分かりやすく解説していきます。
そもそも「循環」はなぜ大切なのか?
筋肉や神経も、生きている組織です。
例えば筋肉を動かすためにはエネルギーが必要で、そのエネルギーを作る過程では酸素が重要になります。
身体を動かす
↓
筋肉がエネルギーを使う
↓
酸素が必要になる
↓
血液によって酸素が運ばれる
↓
組織で物質交換が行われる
↓
不要になった物質や水分が回収される
身体では、このような流れが絶えず行われています。
ですから、筋肉を考える場合も、
「硬いか、柔らかいか」
だけでは十分ではありません。
その筋肉を適切に使えているのか。
必要な酸素が供給されているのか。
使ったあとの物質交換や回収が行われているのか。
こうした視点も身体を理解するうえでは大切です。

慢性腰痛では「腰の筋肉の酸素化」が違う?
2024年に発表された研究では、慢性腰痛のある13名と腰痛のない13名に体幹伸展運動を行ってもらい、腰部の傍脊柱筋の酸素化を調べています。
研究では「NIRS(近赤外分光法)」という方法が使用されています。
NIRSは、近赤外光を利用して、筋肉などの組織にどの程度酸素が存在しているのか、血液量がどのように変化しているのかを身体を傷つけずに測定する方法です。
その結果、慢性腰痛群では腰痛のない人と比較して、腰部筋の酸素化と運動時の機械的効率が低いことが確認されました。さらに運動中には総ヘモグロビン・ミオグロビン量の低下も確認されています。
簡単にいうと、
慢性的に腰痛がある方では、腰の筋肉が働くときの「酸素の使われ方」や「筋肉の働き方」が、腰痛のない方とは異なっている可能性がある
ということです。
ただし、ここには注意が必要です。
この研究から、
「血流が悪くなったから腰痛になった」
と断定することはできません。
腰痛がある
↓
身体を動かさなくなる
↓
筋肉の働き方が変わる
↓
循環や酸素利用にも変化が起こる
という逆の可能性もあります。
このように、研究を見るときには**「関係があること」と「原因であること」を分けて考える必要があります。**

運動すると腰部筋の循環は変わる?
では、身体を動かすことで腰部筋の状態は変化するのでしょうか。
Olivierらは、慢性腰痛患者24名と腰痛のない24名を対象として、脊柱起立筋の酸素化や血液量を調べました。
慢性腰痛群では最初の評価で、腰痛のない人と比較して筋力、仕事量、パワーなどが低く、脊柱起立筋へ酸素を供給する能力にも違いが確認されました。
その後、慢性腰痛群に28日間の運動療法を行ったところ、脊柱起立筋の酸素化や血液量、身体機能が改善しました。
ここは非常に大切なポイントです。
「循環」というと、
マッサージをして血流を良くする
というイメージを持たれやすいのですが、本来、筋肉そのものを動かすことも循環に関係しています。
筋肉は収縮と弛緩を繰り返します。
特に下肢では、この筋収縮が静脈血を心臓へ戻す働きを助けることから、「筋ポンプ」と呼ばれています。
そのため当院でも、施術によって一時的に身体を動かしやすくするだけでなく、最終的には自分自身で身体を動かせる状態につなげることを大切にしています。
「血流が良くなれば腰痛が治る」わけではありません
ここは今回の記事で最も大切にしたい部分です。
慢性腰痛患者74名を対象としたランダム化比較試験では、薬物療法、理学療法、McKenzie法などを比較し、腰部筋の酸素化と痛みの変化が調べられました。
その結果、筋肉内の酸素化に変化がみられた治療と、痛みが大きく改善した治療は完全には一致しませんでした。
つまり、
「血流・酸素化が変わること」と「痛みが改善すること」は同じではない
ということです。
これは非常に重要です。
腰痛には筋肉だけではなく、
関節の動き、神経、炎症、身体活動量、睡眠、仕事や日常生活での負荷など、さまざまな要因が関係します。
そのため、
「血流が悪いから腰が痛い」
「血流を良くすれば腰痛が治る」
と単純に説明するのは適切ではありません。
循環は、腰痛を考えるための一つの重要な要素として捉える必要があります。
筋肉だけではなく「神経にも循環」があります
腰から脚にかけて痛みやしびれがある場合には、筋肉だけではなく神経についても考える必要があります。
特に興味深いのが、腰部脊柱管狭窄症です。
脊柱管狭窄症では、
歩いていると脚が痛くなる、しびれる、重くなる。
しかし少し休むと、また歩けるようになる。
このような「間欠性跛行」がみられることがあります。
一般的には「神経が圧迫される病気」と説明されることが多いのですが、実際にはそれだけではありません。
神経が圧迫されると「神経周囲の環境」も変わる
Kobayashiによるレビューでは、腰部脊柱管狭窄症で神経根に機械的な圧迫が加わることで、静脈系のうっ滞や神経根内の浮腫などが生じ、神経の微小循環が障害される可能性が説明されています。
簡単にすると、
神経への圧迫
↓
静脈の流れが滞る
↓
神経周囲に浮腫が生じる
↓
神経内部の圧が高くなる
↓
神経への血流や酸素供給に影響する
↓
神経機能に影響する
という流れです。
ここで出てくる「浮腫」とは、組織の中に通常より多くの水分がたまっている状態です。
私たちが普段「脚がむくむ」と表現する現象も広い意味では浮腫ですが、なぜ水分がたまっているのかは原因によって大きく異なります。
神経の場合も同じです。
単純に「骨が神経に当たっている」という構造だけではなく、
その周囲で血液や水分がどのように動いているのか
という視点まで含めて考える必要があります。

「浮腫・むくみ」も循環を考えるうえで重要
私たちの身体では、血液中の水分の一部が毛細血管を通して組織側へ移動し、細胞を取り囲む「間質液」となります。
間質液はただ存在している水ではありません。
細胞と血液との間で酸素や栄養、代謝産物などをやり取りするための環境の一部です。
そして余分な水分は静脈系やリンパ系などを介して回収されていきます。
このバランスが崩れると、組織に水分がたまり、「むくみ」として現れることがあります。
だからこそ、
「むくんでいる場所を揉めばいい」
とは限りません。
身体活動量が少ないのか。
足首が十分に動いているのか。
ふくらはぎを使えているのか。
静脈やリンパ系の問題が考えられないか。
さらには心臓、腎臓など内科的な問題が隠れていないか。
原因を考えることが重要です。
これは腰痛でも同じで、症状が出ている場所だけを見るのではなく、その症状がなぜ起きているのかを考えることが大切です。

オステオパシーでは、なぜ「循環」を大切にするのか
ここまでお話ししてきた「循環」という考え方は、当院が施術に取り入れているオステオパシーともつながります。
オステオパシーでは、その歴史の中で血液やリンパなどの体液循環を重要な要素として考えてきました。
ただし、
「オステオパシーを行えば血流が良くなり、身体が治る」
という単純な意味ではありません。
身体の組織が正常に働くためには、酸素や栄養が届けられ、組織で物質交換が行われ、余分な水分などが適切に回収される環境が必要です。
そして循環に関係するのは血管だけではありません。
呼吸、横隔膜の動き、筋肉の収縮、関節運動、身体活動なども、身体の中で水分が移動するための力に関係しています。
実際、2026年に発表されたオステオパシー領域のレビューでは、慢性静脈不全や末梢動脈疾患に対するリンパ系の徒手的アプローチについて検討され、いくつかの生理学的・臨床的変化が報告されています。
一方で、このレビューに含まれた研究は5件のみで対象者数も少なく、研究方法にもばらつきがあります。
そのため現時点では、
オステオパシーの手技によって循環器疾患や浮腫そのものを治療できる
と結論づけられるだけのエビデンスはありません。
当院では、オステオパシーの考え方をそのまま医学的事実として扱うのではなく、解剖学・生理学・神経学・運動学、そして現在の医学研究と照らし合わせながら身体を見ることを大切にしています。
腰痛に対して、なぜ「痛い腰だけ」を施術しないのか
例えば腰が痛い方でも、実際に身体を評価すると、
股関節が十分に動いていない。
足首が硬く歩き方が変化している。
体幹をうまく使えていない。
神経症状を伴っている。
長時間の座位によって身体活動量が大きく低下している。
など、腰以外にさまざまな要因がみつかることがあります。
つまり腰痛に対して必要なのは、
「腰が硬いから腰をほぐす」
という発想だけではありません。
筋肉、関節、神経、循環、そして実際の動作まで確認し、
なぜ腰に負担が集中しているのか
を考える必要があります。
これが当院で問診や身体評価を大切にしている理由です。
徒手療法だけでなく「動くこと」まで考える
腰部脊柱管狭窄症259名を対象としたランダム化比較試験では、
一般的な医療、グループ運動、徒手療法+個別運動療法の3つが比較されています。
徒手療法と個別運動を組み合わせたグループでは、腰椎や股関節へのモビライゼーション、神経モビライゼーション、エアロバイク、ストレッチ、筋力トレーニングなどが組み合わされていました。
2か月時点では、このグループで改善を示した患者の割合が多くなりました。ただし6か月時点では群間差がなくなっているため、「この方法だけが優れている」と単純に考えることはできません。
さらに、腰部脊柱管狭窄症に対する運動療法をまとめたシステマティックレビューでは、13試験・1440名を分析しています。
良好な結果を示した介入では、ストレッチ、筋力・体幹筋エクササイズ、有酸素運動、特にサイクリングなどが比較的多く用いられていました。
ここからも、
施術を受けることだけではなく、自分自身で身体を動かせるようになること
の重要性が分かります。
脚の症状をすべて「腰のせい」にしないことも大切
腰痛と脚の症状を考えるときには、もう一つ注意しなければならない病気があります。
**PAD(末梢動脈疾患)**です。
PADでは脚へ血液を送る動脈が狭くなることで、
歩くとふくらはぎなどが痛くなる。
休憩すると症状が軽減する。
といった「血管性間欠性跛行」が起こることがあります。
これは脊柱管狭窄症による神経性間欠性跛行と症状が似ています。
日本の64施設、腰部脊柱管狭窄症患者570名を対象とした研究では、38名(6.7%)にPADが確認され、そのうち18名(3.2%)はそれまでPADと診断されていませんでした。
つまり、
「歩くと脚が痛いから腰が原因」
とは限らないということです。
このように、身体を診るうえでは「施術できるかどうか」だけではなく、医療機関での検査が必要な状態を見分けることも非常に重要です。
UNITYが大切にしていること
当院では、
「血流を良くします」
ということ自体を施術の目的にはしていません。
大切なのは、
なぜ身体が今の状態になっているのかを考えること
だと思っています。
痛みがある場所だけではなく、
筋肉の働き、関節の動き、神経、身体の使い方、日常生活、そして必要に応じて循環など身体内部の環境まで考える。
そのうえで、
評価
↓
必要な場所への徒手的なアプローチ
↓
身体の変化を再評価
↓
運動・セルフケア
↓
日常生活で身体を使える状態へ
という流れを大切にしています。
施術によって身体を一時的に変化させるだけではなく、
その方自身の身体が本来持っている機能を発揮しやすい環境を整え、再び自分で身体を使えるようにする。
それが、当院が考える身体への向き合い方です。
まとめ
腰痛と循環には、一定の関係があることが研究されています。
慢性腰痛のある方では腰部筋の酸素化や筋機能に違いがみられ、運動療法によって腰部筋の酸素化や血液量が変化した研究もあります。
また、腰部脊柱管狭窄症では、単純な神経圧迫だけではなく、静脈うっ滞や神経根内の浮腫など、神経周囲の微小循環が症状に関係する可能性も考えられています。
しかし、
「血流が悪い=腰痛」
「血流を良くすれば腰痛が治る」
というほど身体は単純ではありません。
筋肉、関節、神経、血管、組織液、身体活動。
これらは別々に存在しているのではなく、互いに関係しながら身体を支えています。
だからこそ当院では、
痛い場所だけを見るのではなく、「なぜその場所に負担がかかっているのか」「その組織が働きやすい環境になっているのか」まで考えること
を大切にしています。
長く続く腰痛や、腰痛に加えて脚のしびれ・重だるさ・歩きにくさなどがある場合には、一度身体全体を評価することも大切です。
※本記事は医学論文をもとに身体の仕組みを解説したものであり、特定の疾患の診断や治療効果を保証するものではありません。急激な症状の悪化、進行する筋力低下、排尿・排便障害、片脚だけの急な腫れや発赤・熱感、安静時にも続く強い下肢痛などがある場合には、医療機関への受診が必要です。
【参考文献】
- Anthierens A, et al. Paraspinal muscle oxygenation and mechanical efficiency are reduced in individuals with chronic low back pain. Scientific Reports. 2024.
- Olivier N, Thevenon A, Berthoin S, Prieur F. An exercise therapy program can increase oxygenation and blood volume of the erector spinae muscle during exercise in chronic low back pain patients. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2013;94(3):536-542.
- Sakai Y, Matsuyama Y, Nakamura H, et al. The effect of muscle relaxant on the paraspinal muscle blood flow: a randomized controlled trial in patients with chronic low back pain. Spine. 2008;33(6):581-587.
- Kobayashi S. Pathophysiology, diagnosis and treatment of intermittent claudication in patients with lumbar canal stenosis. World Journal of Orthopedics. 2014;5(2):134-145.
- Schneider MJ, Ammendolia C, Murphy DR, et al. Comparative Clinical Effectiveness of Nonsurgical Treatment Methods in Patients With Lumbar Spinal Stenosis: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open. 2019;2(1):e186828.
- Comer C, Williamson E, McIlroy S, et al. Exercise treatments for lumbar spinal stenosis: A systematic review and intervention component analysis of randomised controlled trials. Clinical Rehabilitation. 2024;38(3):361-374.
- Uesugi K, Sekiguchi M, Kikuchi S, et al. Lumbar spinal stenosis associated with peripheral arterial disease: a prospective multicenter observational study. Journal of Orthopaedic Science. 2012;17(6):673-681.
- Agha I, Susla L, Ryder E, Udhwani GN, Yao SC. Osteopathic manipulative medicine lymphatic drainage techniques for venous insufficiency and peripheral arterial disease: a review. Journal of Osteopathic Medicine. 2026.

