腹筋を鍛えても腰痛が改善しない理由|研究から考える「体幹」の本当の役割

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UNITYボディコンディショニングの山崎です!

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目次

はじめに

腰痛になると「腹筋を鍛えた方がいい」と言われることがあります。
しかし研究から考えると、腰痛は単なる筋力不足ではなく、体幹の筋肉の使い方、呼吸、横隔膜、腹圧の調整、産後の腹壁の変化などが関係することがあります。この記事では、腰痛と体幹の本当の関係を分かりやすく解説します。

腰痛になったら、腹筋を鍛えればいい?

「腰痛には腹筋を鍛えた方がいい」

このように聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

たしかに、体幹の筋肉は腰を支えるうえで重要です。
しかし、腰痛をすべて「腹筋が弱いから」と考えてしまうと、少し話が単純になりすぎてしまいます。

実際には、腰痛のある方の身体では、次のような状態が関係している場合があります。

・腹筋が弱いというより、必要以上に力が入りすぎている
・呼吸が浅くなっている
・腰を守ろうとして身体を固めている
・腹部や横隔膜がうまく協調していない
・産後では腹壁の構造自体が変化している

つまり大切なのは、ただ腹筋を鍛えることではなく、

体幹の筋肉が必要なタイミングで、必要な分だけ働けるか

という視点です。

この記事では、腰痛と体幹の関係について、いくつかの研究をもとに分かりやすく解説していきます。

腰痛では「筋力不足」ではなく、身体を固める反応が起きている

腰痛があると、身体は無意識に腰を守ろうとします。

例えば、重い物を持つときや、痛みが出そうな動きをするときに、お腹や背中にグッと力が入ることがあります。

これは身体にとって自然な防御反応です。

van Dieënらの研究では、腰痛患者では体幹の筋活動が変化し、腰椎を安定させるような筋の働き方がみられることが報告されています。

このような反応は、専門的には

ブレーシング
スプリンティング

と表現されることがあります。

簡単に言うと、身体を固めて腰を守ろうとする反応です。

これは短期的には必要な反応です。
痛みがあるときに、まったく力が入らず不安定なまま動くよりも、筋肉で腰を支えようとすることは身体にとって自然な選択です。

しかし、この「固める反応」が長く続くと問題になることがあります。

例えば、次のような状態です。

・腰まわりが常に重だるい
・反ると腰が詰まる
・呼吸が浅い
・お腹にいつも力が入っている
・寝ても腰の緊張が抜けにくい
・長時間立っていると腰が張ってくる

このような状態は、単純な筋力不足というよりも、身体が過剰に緊張して腰を守り続けている状態とも考えられます。

つまり、腰痛のある方に必要なのは、いきなり腹筋を追い込むことではなく、

まず身体がどのように腰を守ろうとしているのかを評価すること

です。

「腹横筋だけ鍛えればいい」とは言い切れない

腰痛と体幹の話になると、

「腹横筋を鍛えましょう」
「インナーマッスルが弱いから腰痛になる」

という説明を聞くことがあります。

腹横筋はお腹の深い位置にある筋肉で、体幹の安定性に関わる重要な筋肉です。
そのため、腹横筋を無視してよいという意味ではありません。

ただし、腰痛を「腹横筋だけ」の問題として考えるのは注意が必要です。

Whittakerらの研究では、腰骨盤部痛のある人とない人を比較し、腹壁筋や結合組織の状態を超音波で評価しています。

その結果、腹横筋や内腹斜筋の厚みに大きな違いはみられなかった一方で、腰骨盤部痛のある人では腹直筋の厚みが薄いことが報告されています。

この研究から考えられることは、

腰痛や腰骨盤部痛は、腹横筋だけの問題では説明できない

ということです。

腹筋は一つの筋肉ではありません。

・腹直筋
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・腹横筋

これらがそれぞれ役割を持ち、さらに背筋群、横隔膜、骨盤底筋、股関節周囲の筋肉とも協調しながら働いています。

そのため、腰痛に対しては、次のような考え方だけでは不十分な場合があります。

・腹横筋だけを鍛える
・腹筋運動だけを頑張る
・お腹を常に固める

大切なのは、腹筋を「個別の筋肉」として見るだけでなく、

体幹全体がどのように協調して働いているか

を確認することです。

体幹は「筋肉の強さ」ではなく「協調性」で働く

体幹というと、一般的には腹筋や背筋をイメージする方が多いと思います。

しかし、身体の専門的な視点で見ると、体幹は単なる筋肉の集まりではありません。

・横隔膜
・腹筋群
・骨盤底筋群
・多裂筋
・脊柱起立筋
・胸郭
・骨盤
・股関節

これらが連動しながら、姿勢や動作を支えています。

例えば、呼吸をするときには横隔膜が動きます。
動作をするときには腹筋群や背筋群が働きます。
立つ、歩く、しゃがむ、物を持つときには、股関節や骨盤の動きも関係します。

このとき、体幹の筋肉はただ強く働けばよいわけではありません。

・必要な場面では働く
・必要がない場面では緩む
・呼吸を止めずに姿勢を保つ
・腰だけで固めず、股関節や胸郭も使える

このような協調性が重要です。

腰痛のある方では、この協調性が崩れ、次のような状態になっていることがあります。

・腰だけで支えている
・お腹を固め続けている
・背中の筋肉が抜けない
・呼吸が浅くなっている
・股関節や胸郭が動きにくくなっている

そのため、体幹トレーニングを行う場合でも、

「どれだけ強くできるか」

だけではなく、

どれだけ自然に使えるか

が大切になります。

腹腔内圧という考え方

体幹の安定性を考えるうえで重要なのが、

腹腔内圧

という考え方です。

腹腔内圧とは、簡単に言うと、お腹の中の圧力のことです。

・横隔膜
・腹筋群
・骨盤底筋群
・背部の筋肉

これらが協調して働くことで、お腹の中の圧力が調整され、腰椎の安定性に関わると考えられています。

Hodgesらの研究では、横隔膜は呼吸だけでなく姿勢制御にも関与することが示されています。

つまり横隔膜は、ただ息を吸うためだけの筋肉ではありません。
姿勢を保つことや、体幹を安定させることにも関わっています。

この視点は、腰痛を考えるうえでとても重要です。

なぜなら、腰痛のある方では、次のような状態がよくみられるからです。

・呼吸が浅い
・息を止めて動く
・お腹を固めすぎる
・胸郭が広がりにくい
・骨盤まわりが緊張している

このような状態では、腹腔内圧を自然に調整するというよりも、力で固めて腰を支えている可能性があります。

そのため、腰痛に対しては、

腹筋を強くすること

だけではなく、

呼吸をしながら体幹を安定させること

が重要になります。

呼吸と横隔膜の協調も、体幹には欠かせない

腰痛と呼吸は、一見すると関係がないように感じるかもしれません。

しかし、体幹の働きを考えると、呼吸と腰は切り離して考えることができません。

Villoriaらの研究では、腹部膨満感や腹部膨隆をもつ患者において、腹筋群と横隔膜の協調が乱れる

Abdomino-phrenic dyssynergia

が報告されています。

これは日本語では、

腹部−横隔膜協調運動障害

と表現できます。

この研究は腰痛を対象にしたものではありません。
そのため、「腹部−横隔膜協調運動障害が腰痛の原因である」と断定することはできません。

しかし、腹筋群と横隔膜が協調して働くことが、腹部の状態や姿勢制御に関わるという点では、体幹を考えるうえで非常に重要な視点です。

実際に、腰痛のある方では、次のような状態がみられることがあります。

・お腹が張りやすい
・呼吸が浅い
・肋骨が広がりにくい
・常にお腹に力が入っている
・リラックスして仰向けになれない
・息を吐くのが苦手

このような場合、腹筋を強く鍛える前に、次の点を確認することが大切です。

・横隔膜が動いているか
・肋骨が動いているか
・お腹を固めずに呼吸できるか
・骨盤まわりの緊張が抜けるか

腰痛に対する体幹ケアでは、筋力だけでなく、

呼吸と体幹の協調

を見る必要があります。

産後の腰痛と腹直筋離開

産後の方では、腰痛や骨盤まわりの不安定感、お腹に力が入りにくい感覚を訴えることがあります。

このときに関係する要素の一つが、

腹直筋離開

です。

腹直筋離開とは、左右の腹直筋の間が広がった状態を指します。
妊娠中はお腹が大きくなるため、腹壁には大きな伸張ストレスが加わります。

Sperstadらの研究では、妊娠中から産後12か月までの腹直筋離開の有病率、リスク因子、腰骨盤部痛との関連が調査されています。

ここで大切なのは、

腹直筋離開があるから必ず腰痛になるわけではない

ということです。

産後の腰痛は、腹直筋離開だけでなく、次のようなさまざまな要素が関係します。

・妊娠・出産による腹壁の変化
・骨盤底筋群の機能
・ホルモンや靱帯の影響
・抱っこや授乳姿勢
・睡眠不足
・呼吸の浅さ
・股関節や胸郭の使い方

そのため、産後の方に対しても、

「腹筋を戻すために腹筋運動をしましょう」

と単純に考えるのではなく、まずは呼吸、腹圧、骨盤底筋、体幹の使い方を整えることが重要です。

特に産後は、次のような悩みが出やすい時期です。

・お腹に力が入らない
・腰が反りやすい
・抱っこで腰がつらい
・骨盤が不安定に感じる
・立ち上がるときに腰が痛い
・仰向けから起き上がるのがつらい

このような状態に対して、いきなり強い腹筋運動を行うと、かえって腹部に過剰な負担がかかることもあります。

産後の体幹ケアでは、

鍛える前に、まず身体が安全に力を伝えられる状態を作ること

が大切です。

「腹筋を鍛えているのに腰痛が良くならない」理由

ここまでの研究を整理すると、腰痛と腹筋の関係は単純ではありません。

腰痛のある身体では、腹筋が弱いだけでなく、次のような可能性があります。

・腰を守るために筋肉を固めている
・腹筋群の一部に形態的な変化がある
・呼吸と体幹の協調が乱れている
・横隔膜や腹圧の調整がうまくいっていない
・産後では腹壁そのものが変化している

そのため、腹筋運動をしても腰痛が改善しない方は、

努力が足りないわけではありません。

もしかすると、今の身体に必要なのは、

腹筋をさらに強くすることではなく、

体幹の使い方を整えること

かもしれません。

例えば、次のような方は、腹筋を鍛える以前に身体の使い方を見直す必要があります。

・腹筋をすると腰が痛くなる
・プランクをすると腰が反る
・お腹に力を入れると息が止まる
・運動後に腰が張る
・姿勢を良くしようとすると疲れる

体幹は「固める」ためだけにあるのではありません。

・呼吸をしながら姿勢を保つ
・動きながら腰を支える
・必要なときに力が入り、必要がないときには抜ける
・股関節や胸郭と連動して動く

このように働くことが理想です。

お客様に知っていただきたいこと

腰痛があると、

「自分の筋力が足りないのかな」
「もっと運動しないといけないのかな」
「腹筋が弱いから痛いのかな」

と考えてしまう方も多いと思います。

もちろん、運動や筋力は大切です。
しかし、痛みがある状態で無理に鍛えればよいというわけではありません。

腰痛のある身体は、すでに頑張りすぎていることがあります。

・腰を守るために固めている
・呼吸を浅くして耐えている
・お腹や背中に力を入れ続けている
・股関節や胸郭が動かず、腰だけで頑張っている

このような状態では、さらに腹筋を頑張るよりも、まずは身体が安心して動ける状態を作ることが大切です。

大切なのは、

弱いから鍛える

ではなく、

なぜその筋肉がうまく働けないのかを考えること

です。

当サロンで大切にしていること

UNITYボディコンディショニングでは、腰痛に対して

「腹筋を鍛えましょう」

という一律の提案はしていません。

まずは、今の身体がどのように腰を守っているのかを確認します。

・呼吸は浅くなっていないか
・お腹に過剰な力が入っていないか
・腰だけで身体を支えていないか
・胸郭や股関節は動いているか
・骨盤まわりの緊張は強くないか
・痛みが出る動作でどこに負担が集中しているか

こうした点を丁寧に見ながら、その方に必要なケアを考えていきます。

腰痛の原因は一人ひとり異なります。

同じ「腰が痛い」という症状でも、次のように状態はさまざまです。

・腰を反ると痛い方
・長く座ると痛い方
・朝起きると痛い方
・産後から腰が不安定な方
・運動すると腰が張る方
・腹筋をすると腰が痛くなる方

では、必要なアプローチが変わります。

当サロンでは、筋肉をただ強くするのではなく、

身体全体が自然に連動して働ける状態

を大切にしています。

そのために、姿勢、呼吸、関節の動き、筋膜のつながり、体幹の使い方を総合的に確認しながら、その方に合った施術とセルフケアをご提案しています。

まとめ

腰痛に対して腹筋を鍛えることが、必ずしも悪いわけではありません。

しかし、腰痛を

「腹筋が弱いから」

だけで考えてしまうと、本当に必要なケアを見落としてしまうことがあります。

研究から考えると、腰痛では次のようなことが関係している可能性があります。

・体幹の筋活動が変化する
・身体を固める防御反応が起こる
・腹筋群の形態に変化がみられることがある
・呼吸や横隔膜との協調が重要になる
・産後では腹壁や骨盤まわりの状態も考える必要がある

つまり大切なのは、

腹筋を鍛えること

だけではなく、

体幹が自然に働ける身体を取り戻すこと

です。

腰痛が長引いている方、腹筋をしても改善しない方、呼吸が浅い方、産後から腰や骨盤まわりに不安がある方は、一度身体全体の使い方を見直してみることが大切です。

腰だけを見るのではなく、呼吸、体幹、骨盤、股関節、胸郭まで含めて考えることで、身体は少しずつ変わっていきます。

▶︎呼吸と腰痛の関係についてはこちらの記事でも解説しています。

【参考文献】

van Dieën JH, Cholewicki J, Radebold A. Trunk muscle recruitment patterns in patients with low back pain enhance the stability of the lumbar spine. Spine. 2003;28(8):834-841.

Whittaker JL, Warner MB, Stokes M. Comparison of the sonographic features of the abdominal wall muscles and connective tissues in individuals with and without lumbopelvic pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(1):11-19.

Sperstad JB, Tennfjord MK, Hilde G, Ellström-Engh M, Bø K. Diastasis recti abdominis during pregnancy and 12 months after childbirth: prevalence, risk factors and report of lumbopelvic pain. Br J Sports Med. 2016;50(17):1092-1096.

Villoria A, Azpiroz F, Burri E, Cisternas D, Soldevilla A, Malagelada JR. Abdomino-phrenic dyssynergia in patients with abdominal bloating and distension. 2011.

Hodges PW, Gandevia SC. Activation of the human diaphragm during a repetitive postural task. Journal of Physiology. 2000.

Hodges PW, Gandevia SC. Changes in intra-abdominal pressure during postural and respiratory activation of the human diaphragm. Journal of Applied Physiology. 2000.

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