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代謝とは?身体を動かすエネルギーの仕組みと、臨床で大切な理由

骨模型を使って代謝と身体のエネルギーの仕組みを説明する施術者

こんにちは!

UNITYボディコンディショニングの山崎です!

名古屋市東区芳野・森下駅近くで、
不調や痛みの改善を目指した
ボディコンディショニングサロンを運営しています。

目次

はじめに

「代謝」という言葉を聞くと、

「代謝が良い・悪い」
「汗をかきやすい」
「痩せやすい」

といったことを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

しかし、生理学でいう「代謝」はもっと広い意味を持っています。

私たちの身体では、

筋肉を動かす。
神経が情報を伝える。
体温を保つ。
身体の組織をつくり替える。

こうした生命活動を維持するために、数えきれないほどの化学反応が絶えず行われています。

この一連の反応が「代謝」です。

代謝は少し難しく感じる分野ですが、身体を理解するうえでは非常に重要です。

今回は細かな化学式を覚えることではなく、

「食べたものが、どうやって身体を動かすエネルギーになるのか?」

という大きな流れから考えていきます。

代謝とは「壊す」と「つくる」の繰り返し

代謝は大きく、

異化(catabolism)
同化(anabolism)

の2つに分けられます。

異化は、糖質や脂質などを分解してエネルギーを取り出す反応

同化は、そのエネルギーを利用してタンパク質など、身体に必要なものをつくる反応です。

少しイメージしやすくすると、

身体を「建設現場」に例えてみます

古い建物や材料を分解して、使えるものを取り出す。

これが異化

取り出した材料やエネルギーを使って、新しい建物をつくる。

これが同化です。

身体の中でも、

分解する

エネルギーを取り出す

そのエネルギーを使う

新しいものをつくる

という反応が常に行われています。

つまり代謝とは、「エネルギーを消費する」という話だけではありません。

身体を維持し、つくり替え続ける仕組みそのものなのです。

代謝の全体像|栄養素を分解する異化とATPを利用して身体をつくる同化の関係

身体が実際に使うエネルギー「ATP」

では、食事からエネルギーを摂っているのであれば、

「食べたご飯を筋肉が直接使っているの?」

と思うかもしれません。

実際はそうではありません。

ご飯に含まれる糖質などは、身体の中でさまざまな反応を経て、最終的に**ATP(アデノシン三リン酸)**という利用しやすい形へ変換されます。

ATPはよく、

「身体のエネルギー通貨」

と表現されます。

もう少し身近に例えるなら、充電式のバッテリーのようなイメージです。

食事そのものがスマートフォンを動かすわけではなく、一度バッテリーにエネルギーを蓄え、それを使って画面や通信機能を動かします。

身体でも似たように、

食事

栄養素

代謝

ATP

筋肉や神経などが働く

という流れがあります。

ただしATPは大量に貯蔵しておけるものではありません。

使いながら、同時に再び作り続ける必要があります。

ATPは「動くため」だけのエネルギーではない

ATPというと、運動するときに必要なエネルギーと思われがちですが、それだけではありません。

例えば筋肉。

筋肉が収縮するときには、アクチンとミオシンというタンパク質が相互作用し、そこにATPやカルシウムイオン(Ca²⁺)が関わります。

そして重要なのが、

筋肉は「力を出すとき」だけでなく、「力を抜くとき」にもATPを必要とする

ということです。

筋収縮が終わると、細胞内に増えたCa²⁺を筋小胞体へ戻す必要があります。

このとき働くポンプもATPを利用します。

つまり、

縮む → ATPが必要
緩む → ATPが必要

ということです。

「エネルギー=力を出すためだけのもの」

ではありません。

身体を元の状態へ戻し、次の活動に備えるためにもエネルギーは使われています。

食べた糖はどうやってATPになるのか?

ここから少し専門的になります。

しかし、全体像だけつかめれば十分です。

糖質を例にすると、大まかな流れは、

グルコース

解糖系

ピルビン酸

アセチルCoA

TCA回路

電子伝達系

ATP

となります。

名前だけ見ると難しいですが、

「食べたものを細かく分解しながら、そのエネルギーをATPへ移している」

と考えると分かりやすくなります。

糖からATPができる流れ|グルコースが解糖系・TCA回路・電子伝達系を経てATPになる過程を示した図

①解糖系|まず糖を細かくする

グルコースはまず、細胞質で解糖系という反応を通ります。

1つのグルコースを段階的に変化させ、最終的にピルビン酸をつくります。

この途中でATPも作られます。

解糖系だけを見ると、1分子のグルコースから得られるATPは正味2分子です。

ここでは、

「大きな糖を細かくして、次の工程へ渡す場所」

くらいに考えてください。

料理に例えるなら、

大きな食材をそのまま鍋に入れるのではなく、まず包丁で使いやすい大きさに切っている段階です。

② TCA回路|エネルギーを次の工程へ受け渡す

ピルビン酸は主にミトコンドリア内でアセチルCoAへ変換され、その後TCA回路へ入ります。

TCA回路は、

クエン酸回路
クレブス回路

と呼ばれることもあります。

ここで大切なのは、

TCA回路そのものが大量のATPを直接作るわけではない

ということです。

主な役割の一つは、

NADHやFADH₂という形にエネルギーを受け渡すこと。

そして、そのエネルギーが次の「電子伝達系」で利用されます。

リレー競技に例えると

グルコースが持っていたエネルギーという「バトン」を、

解糖系

TCA回路

電子伝達系

と次々に渡しているようなイメージです。

③ 電子伝達系|集めたH⁺の力でATPをつくる

最後に重要になるのが電子伝達系です。

ミトコンドリアの内膜では、NADHやFADH₂が運んできた電子のエネルギーを利用して、H⁺(水素イオン・プロトン)を膜の片側へ集めます。

すると、

「H⁺がたくさんある側」と「少ない側」

ができます。

ここをイメージしやすくするために、駅の回転ゲートを想像してみてください。

たくさんの人をゲートの片側に集めると、反対側へ移動しようとします。

ただし、自由に通れるわけではなく、
決められた回転ゲートを通らなければならないとします。

人がそのゲートを通るたびに、ゲートがクルクルと回ります。

ミトコンドリアでも似たことが起こっています。

H⁺を片側へ集める

H⁺の濃度差ができる

H⁺がATP合成酵素を通って戻る

ATP合成酵素が回転する

その力を利用してATPがつくられる

という仕組みです。

つまり電子伝達系では、電子のエネルギーをそのままATPにしているのではありません。

一度そのエネルギーを使ってH⁺の「偏り」をつくり、そのH⁺が戻る力を利用してATPをつくっているのです。

もちろん実際の細胞内ではより複雑な反応が起きていますが、

「H⁺を集める → 戻る力でATPをつくる」

という大きな流れを理解すると、電子伝達系がかなりイメージしやすくなります。

酸素は何のために必要なのか?

ここで酸素が登場します。

電子伝達系では、電子が次々と受け渡されていき、最後に電子を受け取る役割を酸素が担います。

つまり酸素は、ATPを効率的に作り続ける仕組みにとって非常に重要です。

ここで、

「血流が良ければ代謝も良いのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、少し分けて考える必要があります。

血流と代謝は「物流」と「工場」の関係

血液は、

酸素
グルコース
脂肪酸
アミノ酸
ホルモン

などを組織へ届けています。

血流を配送トラックと考えてみます。

トラックが工場へ材料を運んでくれる。

しかし、いくら材料が届いても、工場の機械が動かなければ製品は作れません。

反対に、工場の能力が高くても材料が届かなければ仕事はできません。

身体でも、

循環=酸素や栄養素を届ける仕組み

と、

代謝=届けられたものを細胞内で利用する仕組み

は関係していますが、同じものではありません。

だから、

「血流を増やせば、すべての代謝が良くなる」

と単純には考えない方が正確です。

「乳酸=疲労物質・老廃物」ではない

代謝の話でもう一つ知っておきたいのが乳酸です。

「乳酸が溜まったから筋肉が疲れた」

という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

しかし現在では、

乳酸を単なる老廃物として考えることは適切ではありません。

乳酸は酸素がある状態でも絶えず作られています。

さらに、作られた乳酸は別の細胞や組織へ運ばれ、

再びエネルギー源として利用することもできます。

肝臓へ運ばれてグルコースを作る材料にもなります。

乳酸が筋肉・血液・肝臓を通じて再利用される流れを示した図

このように、乳酸を「作る場所」と「使う場所」の間で移動させる考え方が乳酸シャトルです。乳酸にはエネルギー基質、糖新生の材料、シグナル分子としての役割があることが整理されています。

ですから、

「乳酸=身体に溜まったゴミ」

ではありません。

身体は作った乳酸すら再利用しています。

ここにも、人間の代謝の非常に効率的な仕組みがあります。

糖質だけがエネルギー源ではない

ここまでは分かりやすくするために糖質を中心に説明しました。

しかし、実際には身体は、

糖質
脂質
タンパク質

を利用しています。

脂肪酸はβ酸化などを経てアセチルCoAへ。

アミノ酸も種類によって、ピルビン酸やアセチルCoA、TCA回路の中間体などへ変換されます。

つまり、それぞれ入口は違っても、

最終的には共通する代謝経路へ合流しながらエネルギー産生に利用される

ということです。

道路に例えると、

糖質・脂質・タンパク質は別々の道から出発しますが、途中で大きな高速道路へ合流していくようなイメージです。

なぜ身体をみる臨床で「代謝」が大切なのか?

ここからが今回、最も伝えたい部分です。

例えば、

「歩くと脚が疲れる」

という方がいたとします。

しかし、

5秒全力で動くと疲れるのか。

階段を数分上ると疲れるのか。

30分歩くと疲れるのか。

翌日になって疲労感が強くなるのか。

これらは同じ「疲れる」でも、身体にかかっている負荷やエネルギー供給の状況は異なります。

身体では、

ATP-PCr系
解糖系
酸化的リン酸化

などが完全に別々にON・OFFされるのではなく、同時に働きながら運動強度や持続時間によって貢献する割合が変化します。

だから臨床でも、

どこが痛いか

だけではなく、

いつ症状が出るのか
何をすると出るのか
どのくらい続けると出るのか
休むとどうなるのか
翌日はどうなのか

を見ることには意味があります。

これらの情報を組み合わせることで、身体に何が起きているのかをより丁寧に整理できます。

筋肉の中で起きた変化は、神経にも伝えられる

もう一つ興味深いのが、代謝と感覚神経の関係です。

骨格筋にはGroup III・IV筋求心性線維と呼ばれる感覚神経があります。

これらは筋肉に加わる機械的な刺激だけでなく、運動によって生じる代謝環境の変化にも反応します。

そして、この筋からの情報は、運動中の心拍数、血圧、換気などの調節にも関わっています。

つまり、

筋肉は単に力を発揮するだけの組織ではありません。

「今、筋肉の中でどんなことが起きているのか」という情報を神経系へ送りながら、全身の反応を調節している

とも考えられます。

ただし、ここで注意したいことがあります。

「代謝産物がある=痛み」ではありません。

運動をすれば代謝産物が生じるのは正常な生理反応です。

痛みは、

組織の状態
炎症
神経系
負荷量
過去の経験
心理社会的要因

など、多くの要素によって形成されます。

代謝だけですべてを説明することはできません。

ミトコンドリアは「使うこと」で適応する

ミトコンドリアについて臨床的に重要なのが、

運動によって適応する

ということです。

2025年に発表された大規模な系統的レビュー・メタ回帰では、353研究・約6,000人分のデータが解析され、持久的トレーニング、高強度トレーニング、スプリントインターバルトレーニングなどによって、骨格筋のミトコンドリア量や毛細血管に適応が生じることが報告されています。

これは非常に重要です。

身体は、

「何をしてもらったか」だけではなく、
「その後、どう使ったか」によっても変化する

からです。

そのため施術でも、状態に応じて動きやすさを整えたあと、

歩く
筋力を使う
日常生活を再開する
運動負荷を段階的に上げる

といった「身体を使うこと」につなげていくことが重要だと考えています。

「施術で代謝を上げる」と簡単に言わない理由

整体やマッサージなどでは、

「代謝を良くします」
「老廃物を流します」
「乳酸を流します」

といった表現を見ることがあります。

しかし、ここまで説明してきた通り、

代謝は非常に複雑です。

酸素だけでもありません。

血流だけでもありません。

ミトコンドリアだけでもありません。

栄養素、酵素、ホルモン、循環、呼吸、細胞機能、運動負荷など、さまざまな要素が関係しています。

そのため、

「施術を受ける=代謝が上がる」

と単純化するのは適切ではないと考えています。

代謝を学ぶ理由は、施術の効果を大きく見せるためではありません。

身体で起きている現象を、より正確に理解するためです。

痛い場所だけを見ないために

腰が痛いから腰だけを見る。

肩が痛いから肩だけを見る。

もちろん、症状が出ている場所を評価することは大切です。

しかし人間の身体では、

筋肉が働く。
神経が働く。
酸素が運ばれる。
ATPが作られる。
使ったエネルギーを補充する。

こうした反応が絶えず同時に行われています。

だから臨床では、

痛む場所だけでなく、

動き方
症状が出るタイミング
負荷量
持久力
疲労
回復
既往歴
日常生活

なども含めて考える必要があります。

代謝を知ることは、

「すべての症状を代謝で説明すること」ではありません。

むしろ逆です。

一つの原因に決めつけず、

身体で起きている現象を、構造・神経・循環・代謝など複数の視点から考えるための基礎

として、代謝の理解が大切だと考えています。

まとめ

「代謝」は少し難しく感じる分野です。

しかし、大きく捉えると、

食べ物を取り込む

分解する

エネルギーを取り出す

ATPという使える形にする

筋肉や神経などが働く

再びATPを作る

という生命活動の循環です。

解糖系、TCA回路、電子伝達系などの名前をすべて覚える必要はありません。

まず大切なのは、

私たちの身体は、常にエネルギーを作りながら生きている

ということです。

筋肉を動かすこと。

力を抜くこと。

歩き続けること。

運動から回復すること。

その背景には必ず代謝があります。

だからこそ身体をみるときには、

「どこが痛いのか」だけでなく、
「どのように動き、どのように疲れ、どのように回復しているのか」

まで考えることが大切です。

代謝は症状の原因を一つに決めるための知識ではありません。

身体で起きていることを、より深く理解するための土台の一つです。

【参考書籍・文献】

窪田幸雄 著『代謝ガイドブック―栄養素からエネルギー生成・解毒・排泄までよくわかる』技術評論社

・田中文彦 著『忙しい人のための代謝学―ミトコンドリアがわかれば代謝がわかる』羊土社

Brooks GA. The Science and Translation of Lactate Shuttle Theory. Cell Metab. 2018. 乳酸をエネルギー基質・糖新生の材料・シグナルとして捉える乳酸シャトル理論のレビュー

Teixeira AL, Vianna LC. The exercise pressor reflex: An update. Clin Auton Res. 2022. 運動時の筋求心性入力と心拍・血圧・換気調節についてのレビュー

Mølmen KS, et al. Effects of Exercise Training on Mitochondrial and Capillary Growth in Human Skeletal Muscle: A Systematic Review and Meta-Regression. Sports Med. 2025. 骨格筋のミトコンドリア・毛細血管に対する運動適応を解析した系統的レビュー

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