顎関節症に徒手療法は有効?対応を検討できる症状と注意すべきケース

こんにちは!
UNITYボディコンディショニングの山崎です!
名古屋市東区芳野・森下駅近くで、
不調や痛みの改善を目指した
ボディコンディショニングサロンを運営しています。
はじめに
「顎の筋肉が張って、口を開けると痛い」
「以前より口が開きにくくなった」
「顎関節症に整体や徒手療法は有効なの?」
このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
顎関節症には、顎を動かす筋肉の痛み、顎関節そのものの痛み、関節円板の位置や動きの問題、骨や軟骨の変化など、複数の病態があります。
そのため、顎関節症であれば、すべて同じ徒手療法を行えばよいわけではありません。
咀嚼筋の緊張や関節周囲の動きが症状に関係している場合には、徒手療法や運動療法が選択肢になることがあります。
一方で、歯科・口腔外科での診察や画像検査を優先すべきケースもあります。
今回の記事では、顎関節症に対して徒手療法を検討できる症状、施術前に確認すること、徒手療法だけでは対応できない問題について解説します。
顎関節症に徒手療法は有効なのか
顎関節症に対する徒手療法は、症状や病態を適切に確認したうえで行うことで、痛みや口の動かしにくさの軽減に役立つ可能性があります。
ただし、すべての顎関節症に効果があるわけではありません。
徒手療法が対象とするのは、主に次のような問題です。
・咀嚼筋の痛みや過度な緊張
・顎関節周囲の動きにくさ
・痛みが落ち着いた後に残った開口制限
・顎の開閉運動の不安定さ
・顎の動きに影響している首や胸郭の機能低下
一方で、徒手療法によって関節円板や変形した骨を、完全に元の状態へ戻せるわけではありません。
また、外傷、感染、腫瘍、歯科疾患などが疑われる場合には、徒手療法よりも医療機関での検査が優先されます。
大切なのは、「顎関節症だから施術をする」のではなく、何が痛みや動かしにくさに関係しているのかを確認してから、対応方法を選ぶことです。
顎関節症への対応は病名だけでは決められない
顎関節症は、一つの病気ではありません。
主な病態には、次の4つがあります。
・咀嚼筋痛障害
・顎関節痛障害
・顎関節円板障害
・変形性顎関節症
さらに、一人の方に複数の病態が重なっている場合もあります。
例えば、顎関節の痛みを避けながら口を動かすことで、咀嚼筋の緊張が強くなり、筋肉の痛みも加わることがあります。
反対に、噛みしめなどによる咀嚼筋への負担が続き、顎関節周囲にも痛みが現れる場合があります。
そのため、
「顎関節症だから筋肉を揉む」
「音が鳴るから関節を強く動かす」
というように、診断名や一つの症状だけで施術内容を決めることはできません。
症状が始まった経過、痛みの場所、顎の動き、日常生活で加わっている負担などを総合的に確認する必要があります。
徒手療法の前に必要な評価とスクリーニング
徒手療法で最も大切なのは、最初から施術方法を決めることではありません。
まず、現在の症状がどのような問題と関係しているのかを整理します。
顎の症状を確認する際には、主に次のような点をみていきます。
・どこに痛みを感じるのか
・いつから症状が始まったのか
・突然始まったのか、徐々に悪化したのか
・どのような動作で痛みが現れるのか
・どの程度まで口を開けられるのか
・口を開けたときに顎が左右へずれないか
・クリック音やジャリジャリとした音があるか
・咬筋や側頭筋を触ったときに痛みが再現されるか
・顎や顔への外傷がなかったか
・歯科治療後から症状が始まっていないか
・歯ぎしり、噛みしめ、TCHなどの習慣がないか
・首や胸郭の動きに制限がないか
・安静時にも強い痛みが続いていないか
問診や身体の状態から仮説を立て、検査や施術後の反応を確認しながら、その仮説を修正していく考え方を、専門的にはクリニカルリーズニングと呼びます。
一度の検査だけで原因を決めつけるのではなく、複数の情報を組み合わせて判断していくことが重要です。
ただし、整体サロンでは、CTやMRIによる画像診断、歯や噛み合わせの診察、顎関節症の医学的な確定診断は行えません。
歯科的・医学的な検査が必要と考えられる場合には、施術を優先せず、歯科や口腔外科などの受診をご案内します。

顎関節症では保存的な対応が基本となる
顎関節症の多くでは、身体の組織を大きく傷つけたり、元に戻せない変化を加えたりしない、保存的な対応が基本となります。
保存的な対応には、次のような方法があります。
・日常生活に関する指導
・噛みしめやTCHなどの習慣への対応
・薬物療法
・スプリント療法
・運動療法
・徒手療法
・セルフケア
顎関節症への対応では、画像上の関節円板や骨の形を正常に戻すことだけが目的ではありません。
痛みを軽減すること、口を動かしやすくすること、食事や会話への影響を減らすことが重要です。
画像上の変化が残っていても、痛みが軽減し、十分に口を開けられ、日常生活に支障がなければ、機能的には良好な状態と考えられる場合があります。
顎関節症に対する徒手療法とは
徒手療法は、術者が手を使って、筋肉、関節、関節周囲の組織などに刺激を加える方法です。
顎関節症に対しては、次のような方法が用いられることがあります。
・咀嚼筋への穏やかなマッサージ
・筋肉や軟部組織へのストレッチング
・顎関節周囲の可動性を促す施術
・顎の動きに関係する首や胸郭への施術
・顎の動きを整える運動指導
・力を抜くための筋弛緩訓練
ただし、「徒手療法として使用されていること」と「高い科学的根拠によって有効性が証明されていること」は、同じ意味ではありません。
症状や病態によって、効果が期待できる方法や根拠の強さは異なります。
そのため、一つの施術方法をすべての方に当てはめるのではなく、症状の変化を確認しながら選択する必要があります。
痛みが中心なのか、硬さが中心なのかを見分ける
関節に対する徒手療法では、強く動かせば動かすほど効果が高くなるわけではありません。
痛みが強い状態と、痛みは落ち着いているものの組織の硬さが残っている状態では、刺激の加え方が異なります。
痛みが強い場合
痛みが強い場合には、関節を大きく動かすのではなく、小さく穏やかな刺激から始めます。
目的は、無理に可動域を広げることではなく、痛みを悪化させずに顎を動かせる状態を作ることです。
強い痛みを我慢しながら口を開けたり、顎関節を強く押したりすると、筋肉の防御的な緊張が強くなる可能性があります。
組織の硬さが中心の場合
痛みが落ち着いていて、関節包や筋肉などの硬さによる可動域制限が考えられる場合には、反応を確認しながら徐々に動かす範囲を広げます。
ただし、急激に開口量を増やすのではなく、施術中や施術後の痛みを確認しながら段階的に進めます。
・痛みが中心なのか
・組織の硬さが中心なのか
・どの方向の動きが制限されているのか
・施術後に症状が悪化していないか
によって、刺激の強さや方向を調整することが大切です。

徒手療法を検討できる可能性がある症状
咀嚼筋の痛みや過度な緊張
頬にある咬筋や、こめかみにある側頭筋などに痛みや圧痛がある場合は、筋肉に対する徒手療法を検討できることがあります。
例えば、次のような症状です。
「食事をすると頬が疲れる」
「朝起きると顎がこわばっている」
「こめかみや頬が張っている」
「口を開けると筋肉が引っ張られて痛い」
「長時間話した後に顎が疲れる」
筋肉に対する徒手療法では、過度な緊張を和らげ、痛みを軽減し、顎を動かしやすくすることを目指します。
ただし、筋肉を強く揉めばよいわけではありません。
痛みを感じる部分を繰り返し強く押すと、組織への刺激が過剰になり、かえって痛みや筋緊張が強くなる可能性があります。
また、咀嚼筋の痛みには、筋肉への局所的な負担だけでなく、睡眠不足、心理社会的な負担、痛みの慢性化などが関係することもあります。
単純に「筋肉が硬いこと」だけを原因と考えないことが重要です。
医療機関で評価された顎関節の痛み
口を開ける、食べ物を噛む、顎を左右へ動かすなどの動作で、耳の前に痛みが現れることがあります。
歯科・口腔外科で顎関節の状態が評価され、骨折、感染、腫瘍などが除外されている場合には、保存的な徒手療法や運動療法が選択肢になることがあります。
顎関節への負担を抑えながら、
・痛みのない範囲で顎を動かす
・顎周囲の過度な筋緊張を軽減する
・徐々に顎の動く範囲を広げる
・顎に力が入り続ける習慣を見直す
などの対応を行います。
ただし、顎関節に強い炎症や安静時痛がある時期に、無理に大きく口を開けたり、関節を強く押したりすることは適切ではありません。
痛みが落ち着いた後も口が開きにくい場合
痛みや関節内の問題によって顎を動かさない期間が続くと、筋肉、関節包、靱帯などの組織が硬くなり、開口制限が残ることがあります。
例えば、
「痛みは以前より減ったが、口が開きにくい」
「大きく口を開けようとすると途中で止まる」
「食事の際に口を開けづらい」
「口を開けることへの怖さが残っている」
といった場合です。
このようなケースでは、症状を確認しながら関節の可動性を促す施術や運動療法を検討します。
ただし、痛みを我慢しながら強く口を開けることは避ける必要があります。
運動の負荷は、その日の症状や施術後の反応を確認しながら調整します。
顎の動きが左右へずれる場合
口を開けたときに、下顎が左右どちらかへずれたり、動きが途中で引っかかったりすることがあります。
このような状態では、関節の可動性だけでなく、左右の顎関節と筋肉が協調して働いているかを確認します。
徒手療法で一時的に動かしやすい状態を作った後に、
・鏡を見ながら、まっすぐ口を開閉する練習
・小さな範囲で顎をコントロールする練習
・左右へゆっくり顎を動かす練習
・力を入れずに顎を動かす練習
などを行うことがあります。
顎関節症では、関節の動く範囲だけでなく、顎を滑らかに動かすための協調性も重要です。
そのため、術者が行う徒手療法だけでなく、ご自身で行う運動練習も必要になります。

顎だけでなく首や胸郭も確認する理由
顎関節症があるからといって、必ず首や姿勢が原因とは限りません。
しかし、顎関節、咀嚼筋、舌骨周囲の筋肉、頸部は、解剖学的・機能的に関係しています。
首を動かしにくい状態や、頭部を一定の位置で支え続ける姿勢が続くと、顎周囲の筋肉にも負担が加わることがあります。
また、胸郭の動きや呼吸の状態が、首や顎周囲の筋緊張に影響する可能性もあります。
そのため、必要に応じて、
・首を左右へ動かしたときの症状
・頸部の可動範囲
・頭部を支える筋肉の緊張
・胸郭の動き
・呼吸の状態
・長時間同じ姿勢を続けていないか
なども確認します。
ただし、
「姿勢が悪いから顎関節症になった」
「骨盤のずれが顎関節症の原因である」
と一つの原因に決めつけることはできません。
顎関節症は複数の要因が重なって起こる可能性があり、首や姿勢は、そのうちの一つとして評価します。
徒手療法だけでは不十分な理由
徒手療法によって筋肉の緊張が軽減し、一時的に顎を動かしやすくなっても、日常生活で同じ負担が続けば、症状が再び現れる可能性があります。
そのため、顎関節症への対応では、
・顎の状態について理解すること
・セルフケア
・顎の運動練習
・生活習慣の見直し
・TCHや噛みしめへの対応
・症状が悪化した場合の対処方法
を組み合わせることが重要です。
徒手療法は、症状を改善するための一つの手段です。
施術だけで顎関節症のすべての原因を取り除けるわけではありません。
ご自身でも顎への負担に気づき、管理できるようになることが、症状の改善や再発予防につながります。
TCHとは
TCHとは、食事や会話をしていないときにも、上下の歯を接触させ続ける習慣です。
本来、顎を安静にしているときには、上下の歯の間にわずかな空間があります。
しかし、仕事への集中、精神的な緊張、パソコン作業などによって、本人が気づかないまま歯を接触させ続けていることがあります。
強く噛みしめていなくても、弱い接触が長時間続くことで、咀嚼筋の活動が持続し、筋肉の疲労や痛みにつながる可能性があります。
また、顎関節にも持続的な負荷が加わります。
TCHへの対応では、単に「常に歯を離しておこう」と力むのではありません。
まず歯が接触している場面に気づき、自然に顎の力を抜ける状態を目指します。
歯を離そうと意識しすぎると、普段使わない筋肉に力が入り、かえって顎や口周囲の疲労につながる場合があります。
そのため、力ずくで修正するのではなく、日常生活の中で少しずつ気づきを増やしていくことが大切です。
顎の音だけを消すことが目的ではない
口を開けたときに「カクッ」と音がしても、
・痛みがない
・口が十分に開く
・食事や会話に支障がない
という場合には、必ずしも徒手療法を行う必要はありません。
クリック音を消すことだけを目的に、顎を繰り返し鳴らしたり、強く押したりすることは避けましょう。
痛みや機能障害が改善していれば、顎の音が残っていたとしても、日常生活上は大きな問題がない場合があります。
大切なのは、音の有無だけではなく、
・痛みがあるか
・口が十分に開くか
・食事や会話に支障があるか
・以前より症状が悪化していないか
を確認することです。
徒手療法で関節円板や骨を元に戻せるのか
顎関節症に対する施術について、
「ずれた関節円板を元の位置へ戻す」
「変形した顎関節を矯正する」
という説明を見かけることがあります。
しかし、徒手療法の目的を、関節円板や骨を完全に元の状態へ戻すことに設定するのは適切ではありません。
関節円板の位置に変化があっても、痛みや開口障害が生じていない場合があります。
また、変形性顎関節症があっても、日常生活に支障なく顎を動かせている方もいます。
反対に、画像上の変化が大きくなくても、強い痛みや動かしにくさが現れる場合があります。
さらに、変形した骨を徒手療法によって元の形へ戻すことはできません。
徒手療法や運動療法の目的は、
・痛みを軽減する
・顎を動かせる範囲を改善する
・顎運動の協調性を整える
・食事や会話への支障を減らす
・日常生活での負担を管理する
ことです。
画像上の形を変えることよりも、症状と機能を改善することを優先します。
顎関節マニピュレーションと一般的な徒手療法は異なる
急に口が開かなくなるクローズドロックなどに対しては、徒手的顎関節授動術や顎関節マニピュレーションと呼ばれる専門的な処置が行われることがあります。
これは、顎関節の状態を確認したうえで、関節の可動性回復などを目的として行う処置です。
整体サロンで顎周囲の筋肉や首、胸郭などに対して行う徒手療法とは異なります。
当サロンでは、顎関節症の医学的な確定診断や、関節円板の整位を目的とした処置は行いません。
急性のクローズドロックや専門的な処置が必要と考えられる場合には、歯科・口腔外科への相談をおすすめします。
自己判断で顎を強く引っ張ったり、無理に関節を動かしたりすることは避けてください。
徒手療法を優先しない方がよい症状
次のような症状がある場合は、整体やセルフケアよりも、歯科・口腔外科などの医療機関での評価を優先します。
・顎や顔を強くぶつけた後から口が開かない
・顎関節周囲に強い腫れや熱感がある
・発熱を伴っている
・安静にしていても強い痛みが続く
・症状が徐々に悪化している
・急に噛み合わせが変わった
・顔のしびれや感覚異常がある
・歯や歯ぐきに強い痛みがある
・口がほとんど開かず、食事が難しい
・顎の周囲に腫れやしこりを感じる
・原因が分からない体重減少や全身症状がある
顎関節症と似た症状を起こす疾患には、骨折、脱臼、感染、腫瘍、歯科疾患、神経系の疾患などがあります。
これらは整体サロンで診断・治療できるものではありません。
いつもの顎関節症とは異なる症状や、急激な変化がある場合は、自己判断で施術や運動を続けず、医療機関へ相談することが大切です。

当サロンで大切にしていること
当サロンでは、顎の症状がある方に対して、いきなり顎を強く押したり、無理に口を開けたりすることはありません。
まず、次のような内容を確認します。
・症状が始まった時期と経過
・痛みが生じる場所
・顎を動かしたときの痛みや音
・口を開けられる範囲
・顎の開閉時の軌道
・咀嚼筋の緊張や圧痛
・首や胸郭の動き
・噛みしめやTCHなどの習慣
・医療機関での診断や検査歴
・日常生活で症状が悪化する場面
歯科的・医学的な評価が必要と考えられる場合には、施術を優先せず、歯科や口腔外科への相談をご案内します。
医療機関で重篤な疾患や歯科的な問題が除外され、保存的な対応が適している場合には、顎周囲の筋肉や首、胸郭などに対する徒手療法と、運動指導やセルフケアを組み合わせます。
施術だけで症状を変えようとするのではなく、ご自身でも顎に加わる負担に気づき、管理できるようになることを大切にしています。
まとめ
顎関節症に対する徒手療法は、すべての方に同じように行うものではありません。
徒手療法を検討できる可能性があるのは、
・咀嚼筋の痛みや過度な緊張
・医療機関で評価された顎関節の痛み
・痛みが落ち着いた後に残った開口制限
・顎運動の協調性低下
・首や胸郭の機能が顎の動きに影響している状態
などです。
一方で、徒手療法によって関節円板や変形した骨を、完全に元の状態へ戻せるわけではありません。
また、強い腫れ、発熱、外傷後の開口障害、しびれ、急な噛み合わせの変化などがある場合は、医療機関での評価を優先する必要があります。
顎関節症では、徒手療法だけでなく、適切な運動療法、セルフケア、生活習慣への対応を組み合わせることが重要です。
病態や症状の段階を確認しながら、無理のない方法で安全に対応していきましょう。
【参考書籍】
1.一般社団法人日本顎関節学会 編.『新編 顎関節症 改訂版』.永末書店,2018.
2.カイ・バルトロウ 著,中山孝 監修,松井博 訳.『顎関節の徒手理学療法―顎関節症における機能的な関連を明らかにする検査・診断・治療・症例』.ガイアブックス,2013.
3.竹内正敏,姫野かつよ 著.『口腔機能改善の新しいツール 口腔理学療法こと始め』.永末書店,2023.
4.木野孔司 編著,佐藤文明,儀武啓幸,和気裕之 著.『TCHマネジメントとリハビリトレーニングで治す顎関節症』.医歯薬出版,2019.

