顎関節症とは?顎の痛み・音・口の開けにくさを4つの病態から解説

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UNITYボディコンディショニングの山崎です!
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はじめに
「口を開けると顎から音がする」
「食事をすると耳の前が痛い」
「以前より口が開きにくくなった」
このような症状に関係している可能性があるのが、顎関節症です。
顎関節症という言葉は広く知られていますが、実際には一つの病気を表す名称ではありません。
顎の痛み、顎関節の音、口の開けにくさなど、似た症状があっても、問題が起きている場所や病態は人によって異なります。
そのため、顎関節症を考える際には、単に「顎が痛いから顎関節症」と判断するのではなく、筋肉・関節・関節円板・骨など、どの組織が症状に関係しているのかを整理することが重要です。
今回の記事では、顎関節症の基本的な考え方や主な症状、4つの病態について詳しく解説します。
顎関節症とは?
日本顎関節学会では、顎関節症を、顎関節や咀嚼筋に生じる代表的な障害をまとめたものとして分類しています。
つまり、顎関節症は一つの病気ではなく、顎関節やその周囲の筋肉に生じる複数の病態をまとめた名称です。
現在の病態分類では、主に次の4つに分けられています。
・咀嚼筋痛障害
・顎関節痛障害
・顎関節円板障害
・変形性顎関節症
また、一人の方に複数の病態が同時に存在する「重複診断」も認められています。
例えば、顎関節に痛みがあるだけでなく、痛みを避けるために咀嚼筋が緊張し、筋肉の痛みも同時に生じている場合があります。
そのため、「顎関節症」という名称だけで判断するのではなく、どの病態が関係しているのかを確認することが大切です。
顎関節はどのような構造をしているのか
顎関節は、耳の穴の少し前方にあります。
下顎骨の上端にある「下顎頭」と、頭蓋骨側にある「下顎窩」や「関節隆起」によって構成されています。
下顎頭と頭蓋骨の間には、関節円板と呼ばれる線維性の組織があります。
関節円板には、下顎頭と頭蓋骨が直接ぶつかるのを防ぎ、顎の運動を滑らかにする役割があります。
また、口を開ける運動は、単純な蝶番のような動きだけではありません。
下顎頭が回転する運動と、前方へ移動する滑走運動が組み合わさることで、口を大きく開けることができます。
さらに、顎の運動には顎関節だけでなく、咬筋や側頭筋などの咀嚼筋、顎の下にある筋肉、舌骨周囲の筋肉なども関係しています。
そのため、顎の症状を確認するときには、関節だけでなく、周囲の筋肉や顎全体の動きを確認する必要があります。

顎関節症の主な症状
顎関節症の代表的な症状には、次のようなものがあります。
顎や顔まわりの痛み
口を開ける、食べ物を噛む、あくびをするなど、顎を動かしたときに痛みが現れます。
耳の前にある顎関節が痛む場合だけでなく、頬やこめかみにある咀嚼筋に痛みを感じる場合もあります。
「顎が疲れる」
「頬が重だるい」
「朝起きたときに顎がこわばっている」
と感じる方もいます。
顎関節から音がする
口を開閉したときに、
「カクッ」
「ポキッ」
「ジャリジャリ」
「ミシミシ」
といった音が生じることがあります。
ただし、顎関節から音がするからといって、必ずしも強い障害や治療が必要な状態とは限りません。
口が開けにくい
痛みや関節内の動きの問題によって、口を大きく開けられなくなることがあります。
突然、口が開きにくくなる場合もあれば、徐々に開口範囲が狭くなる場合もあります。
食事や歯磨き、あくびなどに支障が生じることもあります。
顎がまっすぐ動かない
口を開けたときに、下顎が左右どちらかへずれることがあります。
また、開閉の途中で引っかかる、動きが滑らかではない、一定の位置で顎が止まるなどの顎運動異常がみられる場合もあります。
これらの症状は同時に現れることもありますが、痛みだけ、音だけ、開口制限だけが現れることもあります。
顎関節症の4つの病態
ここからは、日本顎関節学会による4つの病態分類について解説します。

咀嚼筋痛障害
咀嚼筋痛障害は、顎を動かす筋肉に痛みが生じている状態です。
主に関係するのは、頬にある咬筋や、こめかみにある側頭筋などです。
食べ物を噛む、口を大きく開ける、歯を強く噛みしめるなど、筋肉を使用した際に痛みが生じやすくなります。
人によっては、
「顎が疲れやすい」
「頬が張っている」
「こめかみが重い」
「朝起きると顎が疲れている」
と感じることもあります。
咀嚼筋痛障害では、筋肉を触ったときや、最大まで口を開けたときに、普段感じている痛みが再現されることがあります。
ただし、咀嚼筋の痛みには、局所的な筋肉の問題だけでなく、痛みの慢性化や心理社会的な要因など、複数の要素が関係する可能性があります。
単純に「筋肉が硬いから痛い」と決めつけるのではなく、症状の経過や日常生活での負担も含めて考えることが重要です。
顎関節痛障害
顎関節痛障害は、耳の前にある顎関節そのものに痛みが生じている状態です。
口を開ける、食べ物を噛む、顎を左右に動かすなど、顎関節に負荷が加わる動作で痛みが現れやすくなります。
顎や顔を強くぶつけた外傷のほか、過度に口を開けたこと、硬い物を無理に噛んだこと、歯ぎしりや噛みしめなどが関係する場合があります。
関節包、靱帯、滑膜、関節円板の後方にある組織などに炎症や損傷が生じると、顎関節周囲の痛みや運動制限につながる可能性があります。
顎関節痛障害は単独で生じることもありますが、顎関節円板障害や変形性顎関節症と重なって生じる場合もあります。[1][2]
顎関節円板障害
顎関節円板障害は、下顎頭と関節円板の位置関係や動きに問題が生じている状態です。
多くの場合、関節円板が本来の位置より前方へ移動していますが、内側や外側、後方へ移動している場合もあります。
顎関節円板障害は、さらに「復位性」と「非復位性」に分けられます。
復位性顎関節円板障害
関節円板が通常の位置からずれているものの、口を開ける途中で下顎頭の上に戻る状態です。
関節円板が戻る瞬間に、
「カクッ」
「ポキッ」
というクリック音が生じることがあります。
口を閉じる際にも音が生じることがあり、開口時と閉口時の両方で生じる音を「相反性クリック」と呼びます。
ただし、クリック音があるからといって、必ず痛みや開口障害を伴うわけではありません。
痛みがなく、口も問題なく開けられ、日常生活に支障がない場合には、音だけを完全に消すことを治療目標としないこともあります。
非復位性顎関節円板障害
口を開けても、移動した関節円板が下顎頭の上に戻らない状態です。
関節円板が顎の動きを妨げることで、口が開きにくくなることがあります。
この状態は、一般的に「クローズドロック」と呼ばれます。
以前は顎からクリック音がしていたものの、ある時から音がしなくなり、同時に口が開きにくくなったという経過をたどる場合もあります。
ただし、非復位性顎関節円板障害があっても、時間の経過とともに顎関節周囲の組織が適応し、開口範囲が回復してくる場合があります。[1][2]
変形性顎関節症
変形性顎関節症は、顎関節を構成する軟骨や骨などに、退行性の変化が生じている状態です。
顎を動かした際に、
「ジャリジャリ」
「ミシミシ」
という細かな音が聞こえることがあります。
このような音は、クレピタスや捻髪音と呼ばれます。
関節に骨の変化があっても、必ず強い痛みが生じるわけではありません。
一方で、顎関節の痛みや開口制限を伴い、食事や会話に支障が出ることもあります。
変形性顎関節症の診断では、症状や顎の動きを確認するだけでなく、必要に応じてX線、CT、MRIなどの画像検査が行われます。
複数の病態が重なっていることもある
顎関節症では、一つの病態だけが存在するとは限りません。
例えば、顎関節の痛みを避けながら口を動かすことで、咀嚼筋の緊張が強くなり、筋肉の痛みが加わることがあります。
反対に、咀嚼筋への負担が長く続き、顎関節周囲にも痛みが生じる可能性があります。
また、顎関節円板障害に、顎関節痛障害や咀嚼筋痛障害が重なっている場合もあります。
そのため、一つの症状だけを見て病態を決めるのではなく、
・どこが痛むのか
・どのような動きで痛むのか
・いつから症状が始まったのか
・顎の音が先にあったのか
・口の開けにくさがあるのか
・症状が徐々に悪化しているのか
などを丁寧に確認することが重要です。
顎から音がするだけで治療が必要とは限らない
顎関節から音がすると、
「骨が削れているのではないか」
「このまま口が開かなくなるのではないか」
と不安になる方もいます。
しかし、顎関節から音がすること自体が、必ずしも治療を必要とする状態とは限りません。
痛みや開口障害がなく、食事や会話などの日常生活に支障がない場合は、音だけを完全になくすことを治療の目的としない場合があります。
顎関節の音は、大きくクリック音とクレピタス音に分けられます。
クリック音は復位性顎関節円板障害で生じることが多く、クレピタス音は変形性顎関節症で認められることがあります。
ただし、音の種類だけで病態を確定することはできません。
音とともに痛みがある、以前より口が開きにくくなった、顎が途中で引っかかるなどの変化がある場合は、歯科や口腔外科への相談を検討する必要があります。
画像の変化と症状が一致しないこともある
MRIやCTなどの画像検査では、関節円板の位置や下顎頭の形態、骨の変化などを確認できます。
しかし、画像上の変化が、そのまま痛みの強さや日常生活への影響と一致するとは限りません。
関節円板の位置に変化があっても、痛みや開口障害がない場合があります。
反対に、画像上の変化が大きくなくても、強い痛みや機能障害が生じる場合があります。
そのため、顎関節症は画像だけで判断するのではなく、
・症状が始まった経過
・痛みが生じる動作
・口を開けられる範囲
・顎の開閉運動
・咀嚼筋や顎関節の圧痛
・日常生活への影響
などを含めて、総合的に判断する必要があります。
顎関節症の原因は一つではない
顎関節症は、一つの原因だけで発症するとは限りません。
現在は、複数の要因が重なって症状が発生したり、症状が長引いたりするという、多因子性の考え方が重視されています。
関係する可能性がある要因には、
・顎や顔への外傷
・歯ぎしりや強い噛みしめ
・上下の歯を長時間接触させる習慣
・硬い物やガムを長時間噛む習慣
・片側ばかりで噛む習慣
・口を大きく開ける機会
・睡眠不足
・精神的な緊張
・仕事や日常生活における負担
などがあります。[1][2]
ただし、これらの要因があるからといって、必ず顎関節症になるわけではありません。
例えば、歯ぎしりをしている方が全員、顎関節症になるわけではありません。
一つの原因に決めつけるのではなく、その方の症状がどのような状況で悪化し、どのような負担が続いているのかを確認することが大切です。

顎の痛みや開口障害が、すべて顎関節症とは限らない
顎の痛みや口の開けにくさを生じる疾患は、一般的な顎関節症だけではありません。
顎関節症と似た症状を起こすものには、
・顎関節の脱臼や骨折
・感染性顎関節炎
・顎関節周囲の腫瘍や腫瘍類似疾患
・顎関節強直症
・咀嚼筋の炎症や拘縮
・関節リウマチなどの全身疾患
・歯や歯周組織の病気
・神経障害性疼痛
などがあります。
特に、
・顎や顔を強くぶつけた後から口が開かない
・顎関節周囲に強い腫れや熱感がある
・発熱を伴っている
・安静にしていても強い痛みが続く
・急に噛み合わせが変わった
・顔のしびれや感覚異常がある
・症状が徐々に強くなっている
といった場合は、一般的な顎関節症と自己判断するべきではありません。
徒手療法やセルフケアを優先せず、歯科や口腔外科などの医療機関で評価を受けることが大切です。
当サロンで大切にしていること
顎関節症という名称が同じでも、痛みが生じている場所や顎の動き、日常生活で加わっている負担は人によって異なります。
そのため、当サロンでは、顎だけを強く押したり、無理に口を開けたりするのではなく、
・症状が始まった経過
・痛みが生じる動作
・顎の開閉運動
・咀嚼筋の緊張や圧痛
・頭や首、胸郭の動き
・日常生活で顎に加わっている負担
などを確認することを大切にしています。
一方で、当サロンでは顎関節症の医学的な確定診断や、CT・MRIなどによる画像診断は行えません。
症状や経過から歯科的・医学的な評価が必要と考えられる場合は、歯科や口腔外科などの受診をおすすめします。
顎の症状に対しては、徒手療法や運動指導を検討できるケースと、先に医療機関での検査が必要なケースを分けて考えることが重要です。
まとめ
顎関節症は、一つの病気を表す名称ではありません。
顎関節や咀嚼筋の痛み、顎関節の音、口の開けにくさ、顎運動の異常などを主な症状とする、複数の病態をまとめた名称です。
主な病態には、
・咀嚼筋痛障害
・顎関節痛障害
・顎関節円板障害
・変形性顎関節症
があります。
これらは単独で生じるだけでなく、複数の病態が重なっていることもあります。
また、顎関節から音がすることや、画像上で関節円板や骨の位置・形態に変化があることだけで、必ず治療が必要とは限りません。
大切なのは、痛みの場所や顎の動き、症状の経過、日常生活への影響などを総合的に確認することです。
顎の痛みや開口障害の中には、一般的な顎関節症とは異なる病気が隠れている場合もあります。
強い症状や急激な変化がある場合は、自己判断で無理に顎を動かさず、歯科や口腔外科へ相談してください。
【参考書籍】
1.一般社団法人日本顎関節学会 編.『新編 顎関節症 改訂版』.永末書店.
2.木野孔司 編著,佐藤文明,儀武啓幸,和気裕之 著.『TCHマネジメントとリハビリトレーニングで治す顎関節症』.医歯薬出版,2019.

